2021-01-01から1ヶ月間の記事一覧

世界で一番、綺麗なもの 第八話

悠清葵魔法使いパロ8話 カプ表現はなかったつもりだった。ただ、清葵に見える表現あり。 嘔吐注意 葵の魔力の流し方を指導する清仁。それぞれの思惑とは。

世界で一番、綺麗なもの 第七話

ハルの先導に続いて森を進む。 「ていうかパーティー実質一人ってお前は働かない気かよ」 ハルは決闘で魔法で攻撃してこなかったところを見る限り戦力外だというのはわかるが。 「私、回復要員なので。」 語尾にハートマークでもつきそうなわざとらしい声で…

世界で一番、綺麗なもの 第六話

なるほど、先ほどのビンタはヒットポイントのためだったらしい。 つまり、こうなることを予定していたというわけか。 自分は防御に徹し、相手の力が尽きたところで物理的にヒットポイントを削る、そういう作戦だったわけだ。 …いやいや、そんな話あってたま…

世界で一番、綺麗なもの 第五話

残HP キヨヒト …100% ハル …100% 液晶から目を離せなかった。信じられない。その間にも放たれる魔法弾。しかし、直撃しているはずのそれは微塵も彼女のHPバーを動かすことはなかった。あれだけの攻撃をすべて打ち消すというのは、並大抵のことではない。守…

序章

ここはつまらない。 何をしても返ってくるのは”模範回答”ばかり。 そんな空間に、いや、求められた模範解答を返してしまう自分に、嫌気がさして、 その日俺はその箱庭を飛び出した。 そのために貯めていた金でネット喫茶に泊まったり、たまには公園のベンチ…

世界で一番、綺麗なもの 第四話

四角い真っ白の壁に囲まれた一室。こどもが練習で使うような闘技場だ。 ただしそこにある空気は普段の愚かしくも明るいものではない。 あの冷え冷えするほど真っ黒の瞳で揺らめく感情。彼のその何かに囚われているような物言いは前から気になっていた。彼を…

「そんな煽るようなセリフだって、無自覚なんだろう。」

寂れた駅からバスをはさんで数十分、木枯らしのおちる階段を上って可愛らしいマスコットの付いた鍵を差し込み、ひねる。空いた扉に体を滑り込ませ、なだれ込むように帰宅する。眠気と疲労の限界で玄関に立ち尽くしているとパタパタとスリッパの音が聞こえて…

世界で一番、綺麗なもの 第三話

「それで、なんでついてくるんだよ」 朝から出かけて行ったキヨヒトさんに二人で堂々とついて行っていた。初めは堂々としすぎていて突っ込まれなかったのだが、さすがに限界だったようだ。 「暇だからな!」 「自分たちでもモンスターとか倒してればいいだろ…

一会どころではなかったけれど

「Oha…!」 思わず感嘆の声をあげる。その視線の先には大量の人、人、人。 我が国にも世界に誇る大空港は存在するが、彼女が驚いているのはその人間たちの行列。 やはり日本と言えば、これだろう。勤勉さ、真面目さ、実直さ。数分の遅れも許さない電車などが…

世界で一番、綺麗なもの 第二話

「暇だなぁ」 「暇ですね」 あらすじ、空から降ってきた女性を保護しましたが、彼女は魔法が使えないという。以上。 一応あの初めての邂逅からモンスターを何匹か(私が)倒し、素材を採集できる手袋とナイフを買い与えた。この世界でほとんど最弱とされるス…

腐っても、

思えば、昔からそうだった。 向こうの一挙手一投足に振り回されて、死ぬ気で追いかけて、やっと追いついたと思ったら、いたのか、だなんてなんでもないように笑う。こっちがどんな気持ちでその背中を見ているのか、お前は知らないんだろうけど。 「アルト!…

世界で一番、綺麗なもの 第一話

始まりは、空の青い青い日だった。雲一つないどこまでも続いているようなその吸い込まれるような空に、彼女は現れた。 ”始まりの地”と呼ばれる草原にアオイはいた。なぜ、ここが始まりの地と呼ばれるのか、何を以てして始まりなのか、誰も知らないことではあ…

雛の飛び立ち

「日本に行きたいんだ。」 いきなり出てきた国名に目を瞬かせる。言ったのは姉。言われたのは叔父。 勿論どこにあるかくらいは知っているけど、だって、そんな、急に 「勉強したいことがあるから、日本の大学に行かせてくれ。そのためにも色々調べた。」 「…

インフレーション

感謝の言葉、謝罪の言葉 昔はもっと適切に使えていた、気がする。 筆箱を忘れたら鉛筆を貸してくれた、「ありがとう」 わ、気づかないでぶつかっちゃった、「ごめんね」 そうしたら、きみは笑って、「いいよ」って いつからか、不安で言葉を重ねるようになっ…

貴方の黄金色

モノクロだった世界に何の価値もなかった。 その強引な手に引かれ 彼と見た景色にだんだん色がついて行った。 初めての色は…何だったか。 バイクの後ろに乗せられ必死にしがみつきながら見に行った残映の金赤 それとも、寒さに震えながら見に行った白銀 買い…

バースデイ

小さな手と手を握りしめて、大きな世界に生まれ落ちた。 「Hadu お前の名前だよ。そう、元気いっぱいに、負けないように、真っ直ぐ、育つんだよ。」 一つ、名前をもらった。あたしだけの、生まれて初めての、プレゼント。 温かい腕に包まれて、手づから栄養…

あの時の答え

「翔奏、よくきたな。改めて、私たちの国へようこそ」 乾杯から数十分。執心の先輩からの歯切れの悪い電話で勢いで海外まで来てしまい、なぜかいる知り合いの手厚い歓迎()からようやく解放されたころ、声をかけられた。乾杯、とジョッキを掲げられ、先ほど…

通じない言葉、通じ合う心

「またお越しくださいませ~」 昼時のピークも過ぎた。山積みの食器洗いにやっと手を出しながら、つい思考はこの後のことに行ってしまう。逢瀬の待ち合わせは三時半。迎えに来ると言って聞かない彼にはシフトが三時までとは伝えていない。だって三時までって…

読めない、わからない、手を伸ばせない

「な、翔湊はどんな人がタイプなんだ?」「……なんだよ、いきなり」あんただと言ってしまえたらどんなに楽だったか。「いやぁ、そういうの、あるだろ?」グラスが傾き、またカランと音をたてる。今日はまた一段と面倒な酔い方だ。「別に……なんでそんなこと聞…