モノクロだった世界に何の価値もなかった。
その強引な手に引かれ
彼と見た景色にだんだん色がついて行った。
初めての色は…何だったか。
バイクの後ろに乗せられ必死にしがみつきながら見に行った残映の金赤
それとも、寒さに震えながら見に行った白銀
買い物帰りに指さして話した黄朽葉色だったかもしれないし、
冬の海で拾った貝殻の虹色もあった
馬鹿みたいに早起きして集合した霞色
なんとなく眠れずに寄り添って見上げた月白
アスファルトに力強く芽生えた若草色
軍手を忘れて結局持ち帰れなかった栗色
ふたりの間を通り過ぎた風の夏虫色
白くなった息の先にあった柿色
ショッピングモールを塗りつぶしていた鳥の子色
都会の光を吸い込んでった桔梗色
鼻のすぐ先を飛んだ菜の花色
太陽よりも輝いていた玉蜀黍色
数を競い合った桑の実色
帰り道、声をかけてた烏羽色
困ったように口を濁した赤銅色
そうやって一つずつ色がついて行って、カラフルになった世界で、彼を見て思う。
そうだった。
初めて知った色は