読めない、わからない、手を伸ばせない

「な、翔湊はどんな人がタイプなんだ?」
「……なんだよ、いきなり」
あんただと言ってしまえたらどんなに楽だったか。
「いやぁ、そういうの、あるだろ?」
グラスが傾き、またカランと音をたてる。今日はまた一段と面倒な酔い方だ。
「別に……なんでそんなこと聞くんだよ」
意を探ろうとしても、んー?と見つめ返される。これは、どうせ、覚めれば記憶に残らないタイプか。
それなら、
「……お節介で、人のこと振り回して、それで、笑顔が太陽みたいに眩しい人」
これで気がつくのなら、それはそれでいい。
「んー、やけに具体的だな……実際に好きな人でもいるのか!」
応援するぞ!と目を背けたくなるほど眩しく笑う。そうかよ、好きな人がいたら、喜ぶのか、くそ。あなたがそんなことを言ったら俺はどうにかなってしまいそうなのに。
「それでそれで、どんな人なんだ?」
このモヤモヤの八つ当たりなのは分かっているが、それでもこの感情の遣る瀬がない。いっそ正直に答えてしまおうか。
「背が高くて、好きなことをすごく楽しそうにしてて、でもそれでいつも周り振り回してて、」
隣に目をやる。ふんふん、と素直に頷きながら、こちらをとらえる、曇りのない黄金色。
「そして、目がすごく、綺麗だ」
そのまま、見つめ合う。何だか気恥しいが逸らしたら負けな気がして。一体何と戦ってるんだ。
「ふぅん……。まあ翔湊ならきっと大丈夫だな!」
あっはは!と背中をバシバシ叩く。言質でもとってやりたいところだ。
「……あと、鈍感」結局口から出たのはまた濁した言葉。決定的な言葉を口にして関係が壊れるのがこわいか。いつもこんなのばかりだ。これも、惚れた弱みか、くそ。