2021-04-01から1ヶ月間の記事一覧

クモ嫌いの戯言

今度はこのシナリオをやるんだ、と電話越しに声が響き、ペポンという無機質な音と共にあるサイトのリンクが送られてきた。 舞台は廃墟。主人公である双子はそこを探索してやがて物語の真実へたどり着く。そこだけ切り取って述べてしまえばよくある話と言える…

青春の喜び、切望、愛の後悔、私を信じて

花なんか別に好きじゃなかった。 だから高校からの友人が花を使った仕事をしたいんだといった時も、ふうんって、ただそう思っただけ。元から植物が好きな奴で、テストはいつも赤点ぎりぎりのくせに生物だけは高得点で。それにいろんな花言葉を知っていると諳…

舞台裏の一幕 新年の抱負

「「あけましておめでとうございます」」 二人は保護者から与えられた住居で向いあっていた。曰く、新年のあいさつとは神聖なものであり正しい手順を踏んでさわやかな気持ちで行わなければならない。涼緋仁は一般常識などこれっぽっちも持ち合わせていなかっ…

舞台裏の一幕 ファーストインプレッション

「おう、久しぶりだな。」 長めの髪を耳の下で軽く結った青年、ハルタは朗らかに声をかけた。相対するはいつぞやの飲み会で同席した二人。ハルタは彼らのタキシード姿を目に焼き付けんと目を大きく開いた。今ならプリクラ並みに盛れてるかもしんね。 「おう…

世界で一番、綺麗なもの 第十話

「おいキヨヒト!!!何泣かせてるんだ!!!!!!」 「ウワッ、ヤ、俺は別に探してなんか…は、なに、?」 「泣いてないですっ!!!!!!!!!!!」 アオイが帰ってこないのにしびれを切らしたキヨヒトは魔力の気配を辿っていた。お相手は先ほどまで直…

嘘にするつもりなんて

あたたかい日差しが降り注ぎ、通り抜ける風が足元の桜の花びらを攫う。今日から四月。まだまだ寒い日もあるが、今日みたいに暖かい日は上着がいらないほどであった。主人の上着を丁寧に腕にかけ、ペースを合わせ庭内を散策する。ここで生まれ育った彼女に案…