進路希望書1

雲に覆われた空色がだんだん暗くなってくる。この季節は日が短くなっていくだけでなく、日ごとにだんだん暗くなっている気がする。カレンダーに急かされているようでどうも気分が悪い。今日中に提出の進路希望書の上でペンを回す。そんないきなり言われてもと思ってしまうが、周りの友達がのこされていないのを見るに、何かしら書いて出したのだろう。知らないうちに決めるなんて薄情な奴らだと見当違いの何度目かの文句に反応するように教室の戸が開いた。

「あれ?まだ残ってたのか」

「書き終わってから帰れって、残されてんの~。……司せんせーはなんでセンセ―になったの?」

目の前で未だ消しカスしか乗っていない紙をひらひらとさせると、先生はもうそんな時期かぁと呟きながら向かいの席に座った。

「学生時代、憧れの先生がいたんだ」

「え」

生徒と年が近いこともあり、優しく親しみやすい先生として定評のある彼は浮いた話が噂になることもあったが、そのたびに否定されていたからそんな面白い話が聞けるとは思わなかった。それに体育教師らしい熱のこもった授業をするから、教師に強い思い入れがあるんだろうとよく言われていたのに、たったそんなことで進路を決めているのも意外だ。

「英語の先生でな。……はじめはあまり得意ではなかったんだけど」

懐かしむような柔らかい表情で口を開く。