あらすじ:主人がメンブレしてる(その姿がどうであろうと-4 - toffifeeの本棚 (hatenablog.)
布団にくるまる主人を見て、何かを言おうとして、また何も言えなかった。この人が私を引き上げてくれた時みたいに、そこまではいかなくとも、足りないときに照らすくらいはしたかったのに。どうしたらいいか、なんと言ったらいいか、さっぱりわからなくて、それをやってのけるこの人はやっぱりすごいんだなぁと月並みなことを考えてしまう。
「着替え、持ってきますね」
気の利いたことは言えなくて、スーツが皺になってしまうからともっともらしい理由に逃げる。私の逃げたその理由は主人にとってもそうだったらしく普段通りシャツに手を通させてくれた。ただ、靴下は別。女体になってからというものそれだけは自分で脱ぎ着すると聞かなかったのだ。意図はわからないがこだわりがあるのならそれで。特別気にせず脱いだそれを預かり処置ごとに簡単に分けておく。後でする洗濯よりも、スーツの皺伸ばしよりも、昼から布団を抱えている彼の方が心配だった。何ができるとは言えないけども。小さくて白くて、赤みを帯びた足が布の塊から飛び出している。よく見ると踵の皮膚が少しめくれていて。
「デイヴィッド様!、!?」
所謂靴擦れだろうと思うよりも先に声が出てしまった。素っ頓狂な声に驚いたのか布団から顔を出して、なに……と言わんばかりの不審そうな顔をしている。
「靴擦れされてたのですか、言ってくだされば……、すぐ手当て道具を持ってきます」
部屋を出る前背中に、良いよ大した怪我じゃないしと聞こえた気がしたが聞こえないふりをしてやった。到底主人に取る態度ではないな、叱られたらちゃんと罰を受けよう。でも、それよりも、デイヴィッド様が傷ついているのは。外側のことなら見せて、手当てさせてほしい。どうせ内側には触れられないのだから。
部屋に戻ると案外素直に足を差し出してきた。意地を張っていたとかではなく本当に大したことないと思っていたんだろうか。あなたの傷はどんなものだって大したことなのに。処置を終えて顔を上げると、先ほどまで大人しくしていた足を頬につきさしてきた。
「さっき無視したでしょ」
「すみまひぇん」
「いつもはそんなことしないのに」
「デイヴィッド様こそ、いつもはすぐ教えてくださるじゃないですか」
それでも気に入らなかったのか不満げに顔をそらす。
「どんな、姿をされていても、貴方だから傷ついてほしくないと思っているのです。……お許しを」
いつも彼が頭や髪、額にするように足先に唇を合わせるだけのキスをする。何とも言えないような複雑そうな顔でこちらを見ていたが、拗ねたり怒ったりしているわけではなさそうなので良いこととしよう。